2022.11.29
胃拡張捻転症候群を発症し、胃腹壁固定術により治療した症例
症例は12歳のMix犬の女の子です。
食事を食べた後に元気が無くなり、よだれを流しながら何回も空吐きを繰り返しているとのことで来院されました。
来院時、お腹がかなり張っていたので、腹部X線検査を実施したところ、胃拡張捻転症候群を発症していた為、緊急手術を行いました。
胃捻転(胃拡張捻転症候群:GDV)は大型犬で多くみられる緊急疾患です。
腹腔内の消化管である胃が捻転(ねじれること)を起こすことにより、臓器や周囲組織の血流障害から生体にさまざまな悪影響を及ぼし、短時間のうちに命にかかわる状態へと進行するため、早急な内科的・外科的治療が必要となります。
一般的には大型犬で胸の深い犬種で起こりやすいといわられていますが、どの犬種でも発症する可能性があります。
典型例では、食後数時間内に、突然落ち着きがなくなり、空吐き、腹部膨隆(胃内のガス貯留による)を示しますが、流涎(よだれ)や腹部を舐めるなどの症状だけを示す場合もあります。
食後に様子がおかしいなと思った際には動物病院にご相談頂くことをお勧めします。
本症例は、術後は順調に回復し、現在は術前に認められた症状は無く、元気に過ごしてくれています。
腹部のレントゲン写真です。
胃にガスが大量に貯留して、黒く膨らんでいるように写っています。
また、写真の矢印の領域で特徴的な“捻転ライン”が認められます。
胃拡張捻転症候群と判断され、緊急的な状態です。
緊急手術により、拡張した胃の内容物を吸引し、減圧を行いました。
貯留したガスにより、腸までパンパンに膨らんでいます。
捻転の状態を確認し、捻れを整復します。
胃拡張捻転症候群は、極めて緊急性が高い疾患の為、この段階まで迅速に処置を行います。
胃と腹壁を自然な形になるように固定しました。
胃捻転の整復後に胃固定を行わなかった場合の再発率はおよそ80%と言われています。
胃固定をすることにより、再発率が0~20%と大幅な軽減が期待出来ます。