橈尺骨骨折はすべての年齢、犬種に起こりますが、トイプードル、イタリアングレーハウンド、ミニチュアピンシャー、チワワなど骨の細い小型犬種に多い骨折です。通常、橈骨と尺骨の2つの骨折が同時に起こります。
当院においては、通常ギブス固定を行い、手術まで安静とし、骨折の状態により各種手術法(プレート固定法、創外固定法、ギブスなどの外固定法、ピンニング法)を選択しています。
骨折した骨の周りが腫れて、熱を持ち、痛がります。 折れた足を上げて歩くようになったり、変形が見た目で分かることもあります。 |
症状、レントゲン検査、CT検査によって診断します。 神経や血管、筋肉などの軟部組織に起こっている合併症も含めて診断します。 交通事故の場合、前肢骨折のみの場合は少なく全身をくまなく検査します。 |
全身麻酔による整復手術を行います。 非観血的といって傷をつけずギブス固定のみで治療できることもあります。 しかし、大部分の症例が骨折部位や犬種などによりさまざまなプレートやスクリュー、ピンを用い整復を行います。 術後はギブス固定を行い安静に過ごします。ギブス固定は2週間程度行います。 その数ヶ月経過後、骨癒合を認めた後スクリューやプレートを抜去していきます。 |
複雑骨折とは骨が折れて、折れた骨の一部が皮膚を突き破り外に飛び出してしまった状態のことです。交通事故などで起こることが多い骨折です。
基本的には骨折と同様ですが、骨が皮膚の外に出るため、骨の癒合不全や感染が起こる可能性が高いです。
より慎重な術前術後のケアが必要です。
骨折した骨の周りが腫れて、熱を持ち痛がります。 症状は骨折した場所により異なりますが、例えば、足を骨折した場合は折れた足を挙げて歩くようになったり、変形が見た目で分かることもあります。脊椎を骨折すると神経の麻痺や排便、排尿に障害が起こることがあります。 |
症状、レントゲン検査、CT検査によって診断します。 外傷性骨折の場合は、神経や血管、筋肉などの軟部組織に起こっている合併症を診断することが、病的骨折の場合は、骨折した原因となっている病気の診断が大切になります。 |
骨折した部位と合併症により治療方法は様々ですが、ピンやプレートを用いて骨折して変位した骨を正常な位置に固定し、骨の再生を即すケアをすることが一般的です。 |
前十字靭帯とは膝の関節内にある靭帯で、大腿骨(太ももの骨)に対して脛骨(すねの骨)が前に飛び出さないように制限するとともに、膝の過伸展を防ぐ機能を持っています。この靭帯が何かしらの原因で切れてしまう病気のことを前十字靭帯断裂といいます。
前十字靭帯断裂は、老化に伴う靭帯の脆弱化(退行性変化)や肥満による負重の増加が原因となる場合と、内分泌異常が原因となる場合があります。
太っている、高齢などが誘因となり、走っている途中、曲がったときなどに突然後肢の跛行を起こすなどで来院されます。
触診とレントゲン検査でほとんどの診断が可能で、体重とその程度によって内科治療と外科治療に分類して治療します。
重傷の場合半月板損傷も起こしており、その場合体重に関わらず手術が適応となります。多くは関節外法といわれる手術法を実施し、通常の生活が出来るまで回復します。
運動している時に、突然跛行し始めた、片足を完全に挙上しているなどの症状がみられます。 |
臨床所見、身体検査、レントゲン検査などを行い診断します。 身体検査では関節部分の触診で大腿骨に対して脛骨が前方に移動するかどうかを調べる。 レントゲン検査でも、脛骨の前方への移動を検査します。 |
状況によっては、安静、抗炎症薬の内服などの保存療法を行います。 特に、体重が10キロ以上、基礎疾患がある、または保存療法に反応しない場合は手術で前十字靭帯の再建を行います。関節外法といった人工靭帯を用いる場合や、TPLOといって特殊なプレートを用いた方法などがあります。 |
TPLOとは犬の前十字靭帯断裂に対して行われる最新の手術法の一つです。
従来の手術法は切れた靭帯を代用品を用いて修復する方法でしたが、TPLOでは靭帯が切れた状態で関節を安定させるために、骨を部分的に切り取って角度調整し、靭帯がなくても歩いた時に膝が安定している状態を作る手術法です。
TPLOはどの犬種にも行えますが、特に大型犬、ホルモン疾患を併発する犬他の病気のためにステロイド剤を使用している犬などには有効性が高いです。
レッグペルテスとは、大腿骨頭無菌性虚血性壊死症と言い、なんらかの要因で大腿骨(太ももの骨)の大腿骨頭という部分への血行が阻害されて、その部分が壊死してしまう病気です。疼痛を伴い、トイプードル、ウェストハイランドホワイトテリアなどの10キロ未満の小型犬で、生後3~13ヶ月(多くは6~7ヶ月)の成長期に多く発生します。
病変のある肢は、疼痛により持続的な跛行を起こし、筋肉量の低下をきたします。触診による可動域の制限(後肢があまり動かない)とレントゲン検査によって診断が出来ます。
内科治療に反応するのは約10%と言われ、ほとんどが虚血性壊死を起こした大腿骨頭を切除する手術を実施します。
術後は筋肉量などにより回復時期が異なりますが、ほとんどが通常の生活を問題なく送れるまでに回復します。
足を痛がって引きずる、足に力が入らないなどの症状がみられます。症状は徐々に進行していく場合も、突然現れる場合もあります。痛がる足を噛んだり、触られるのを嫌がったりすることもあります。 |
臨床所見、身体検査、レントゲン検査で診断します。 レントゲン検査では大腿骨頭の変形を確認することができます。 |
手術で壊死した大腿骨頭を切除します(大腿骨頭切除術)。 |
股関節脱臼とは骨盤を形成している寛骨と大腿骨頭の連結部分が外れることです。多くは交通事故や高所からの飛び降りなどで後ろ足に力がかかることによって、骨を連結している靭帯が切れて起こります。どんな犬種や年齢でも起こります。
突然後肢の跛行がおこり、非常に痛がります。
触診とレントゲン検査により診断でき、初期段階であれば麻酔下による整復を行い、それでも再脱臼するようなら手術を実施します。
当院では猫、小型犬、中型犬ではトグルピンという人工靭帯による整復術を基本とし、関節の状態により他の手術を選択しています。
痛みが強く、突然後ろ足を挙上する、触られるのを嫌がるなどの症状がみられます。 |
身体検査、レントゲン検査で診断します。 レントゲン検査では脱臼した股関節を確認することができます。 |
まずは手術ではない股関節の整復術(非観血的整復術)を行い、大腿骨頭を寛骨内に戻します。 整復しても、すぐに脱臼をしてしまう場合は、手術で股関節を固定します。 トグルピンといった器具や人工靭帯を用い、股関節が再脱臼しにくいように再建する方法がよく取られます。 |
膝蓋骨(しつがいこつ:膝のお皿の骨)は大腿骨(太ももの骨)にある滑車溝という溝を滑るように移動します。膝蓋骨がこの滑車溝から内側・外側に外れることを膝蓋骨脱臼といいます。
小型犬ではとくに内側に外れることが多く、これを内方脱臼といいます。発育の異常などによる先天性なものと、運動や落下などで起こる後天的なものがあります。
先天的なものはトイプードル、ポメラニアン、ヨークシャテリア、チワワ、マルチーズなどで多く発生します。
症状は脱臼の進行によって、4段階のグレードに分けられています。
グレード1:脱臼しても自然に正常な状態に戻るため、無症状で気づかないことが多いが、時々スキップするような症状が出る場合があります。
グレード2:時々脱臼して足を浮かせていることがありますが、犬が足を伸ばしたり、人が手をかせば簡単に元に戻ります。
放置すると骨の変形がおきてグレードが進行することがあります。
グレード3:骨の変形や筋肉の歪みが生じて、常に脱臼している状態が続きます。
人の手で戻すことはできますが、またすぐに脱臼してしまうため、脱臼した足を浮かせていることが多くなります。
グレード4:骨の変形や筋肉の歪みが重度で、常に脱臼した状態が続き、人の手でも元に戻すことができません。
膝を伸ばすことができず、常に後ろ足を曲げたまま歩いています。
跛行が続く場合は、手術が必要になります。
症状はグレードによりことなります(上記参照)。 グレードが1であればほとんど無症状ですが、グレードが進むと後肢を跛行したり、挙上したりします。 |
身体検査、レントゲン検査で診断します。 身体検査では触診して膝蓋骨が外れていることを確認します。 レントゲン検査では脱臼した膝蓋骨、骨の変形、筋肉の状態を確認します。 |
軽症例の場合は、症状に応じて内服薬や運動制限による治療を行います。 痛みや炎症がある場合は、抗炎症薬やサプリメントを使用し内科的に治療します。 跛行が顕著であったり重症例の場合は、手術で膝蓋骨が脱臼しにくいようにします。 肥満があれば減量させることにより症状の進行を予防します。また、飼育環境においてカーペットを敷くなど滑らないようにするのも大切です。 |
膝蓋骨(しつがいこつ:いわゆるお皿の骨)は大腿骨(太ももの骨)にある滑車溝という溝を滑るように移動します。膝蓋骨がこの滑車溝から外れることを膝蓋骨脱臼といいます。小型犬ではとくに内側に外れることが多く、これを内方脱臼といいます。発育の異常などによる先天性なものと、運動や落下などで起こる後天的なものがあります。
先天的なものはトイプードル、ポメラニアン、ヨークシャテリア、チワワ、マルチーズなどで多く発生します。
症状は脱臼の進行によって様々であるため、4段階のグレードに分けられています。
グレード1:脱臼しても自然に正常な状態に戻るため、無症状で気づかないことが多いが、時々スキップするような症状が出る場合があります。
グレード2:時々脱臼して足を浮かせていることがありますが、犬が足を伸ばしたり、人が手をかせば簡単に元に戻ります。放置すると骨の変形がおきてグレードが進行することがあります。
グレード3:骨の変形や筋肉の歪みが生じて、常に脱臼している状態が続きます。人の手で戻すことはできますが、またすぐに脱臼してしまうため、脱臼した足を浮かせていることが多くなります。
グレード4:骨の変形や筋肉の歪みが重度で、常に脱臼した状態が続き、人の手でも元に戻すことができません。膝を伸ばすことができず、常に後ろ足を曲げたまま歩いています。
跛行が続く場合は、手術が必要になります。
症状はグレードによりことなります。 グレードが1であればほとんど無症状ですが、グレードが進むと後肢を跛行したり、挙上したりします。 |
身体検査、レントゲン検査で診断します。 身体検査では触診して膝蓋骨が外れていることを確認します。 レントゲン検査で脱臼した膝蓋骨を確認します。 |
軽症例の場合は、症状に応じて内服薬による治療を行います。 症状が重い場合は、手術で膝蓋骨が脱臼しにくいようにします。 痛みや炎症がある場合は、抗炎症薬やサプリメントを使用し内科的に治療します。 |