2022.10.24
先天性門脈体循環シャントを診断し、手術にて治療した症例
症例は10ヶ月のチワワの男の子です。
食事を食べた後に元気が無くなり、フラつきが出てしまうとのことでかかりつけ医の先生にご相談したところ、高アンモニア血症が見つかり、門脈体循環シャントを疑い、当院を紹介受診されました。
犬と猫の門脈体循環シャント(PSS:Portosystemic Shunt)とは、略されて門脈シャントやPSSとも呼ばています。原因としては遺伝的素因が強いといわれています。
本来、腸(消化管)から吸収された栄養や毒素(アンモニア)は門脈という静脈血管から肝臓に運ばれ処理されます。しかし、門脈シャントの犬や猫は、門脈血管の途中に枝分わかれしたシャント血管ができてしまっているので、そちらに栄養や毒素が流れ込んでしまうのです。
門脈体循環シャントの犬や猫は栄養状態が悪いので体が小さかったり、毒素の影響で流涎や発作、壁に頭をおしつけたり旋回運動などの様々な神経症状(※肝性脳症)が引き起こされます。
そして尿酸アンモニウム結石ができるので、泌尿器絡みの症状で発見されることもあります。
しかし、なかには症状がほとんどなくシニアになるまで発見されない症例もたくさんいます。
本症例では、CT検査にて門脈体循環シャント(脾静脈-横隔静脈シャント)が見つかり、手術にてシャント血管結紮術を行いました。
術後は順調に回復し、現在は術前に認められた症状は無く、元気に過ごしてくれています。
CT検査にて門脈体循環シャントが見つかりました。
脾静脈から分岐したシャント血管が、肝臓を迂回して後大静脈(CVC)に流れ込んでいます。
手術写真です。
腹腔の奥の方にあるシャント血管を分離し、遮断した所です。
この手術により血流が門脈へと再開し、本来の身体の機能を取り戻すことが出来ました。