2022.10.20
前立腺癌に対し膀胱・尿道全切除を行い尿管転植術を実施した症例
前立腺癌と診断され、当院へ紹介されたわんちゃん(M.ダックスフンド)の紹介です。
紹介時にリンパ節転移の他に肺転移が認められていたため、内科(分子標的薬等)による治療を行っていました。
内科治療を2ヶ月ほど行ったところで、前立腺癌が膀胱の尿管開口部のあたりに広がって、腎臓から作られた尿が膀胱に流れず、水腎症という状態になりました。
そのため、急性腎不全になり、生命の維持が危ぶまれたため、腎瘻という腎臓に直接チューブを入れ、尿を外に排泄させることにより腎不全の治療を行いました。
腎不全が改善したところで、ご家族と相談し、緩和目的の手術(膀胱・前立腺切除、尿管の転植術)を実施しました。
手術からしばらくの間は、カテーテル等の管理でご家族も大変でしたが、現在は、すべてのカテーテルやチューブが取れ、おむつ交換等の管理で過ごせています。
腎臓の値も改善し、元気や食欲もあり経過は順調です。
腹部CT検査では、巨大な前立腺腫瘍とその周囲のリンパ節の腫大、腎盂の拡張、尿管の拡張が認められました。
膀胱と前立腺腫瘍を切除しているところです。
写真は中央ひだりが直腸で右側が前立腺と膀胱です。
尿管を包皮内に転植するために、腹壁にそのルートを作っているところです。
術後の外観です。
包皮と腹壁にそれぞれ尿管が開口しています。
本症例では、尿管への腫瘍の浸潤が認められており、右側の尿管を腫瘍浸潤部まで切除したことにより尿管の長さが短くなったため、右尿管を腹壁に開口させました。
通常は両尿管を包皮内に開口させるのが常法となります。