腹腔鏡

腹腔鏡について
腹腔鏡の始まりは、1902年にドイツで犬に対してお腹の中を観察したのが最初と言われています。
また医療として初めて報告されたのもドイツであり、1985年に胆嚢の摘出が報告されています。
日本においても1990年に第1例目の胆嚢摘出術が実施され、最近では卵巣子宮摘出術、膀胱外科、予防的胃固定術など様々な手術が行われるようになっています。
当センターでも、腹腔鏡機器を導入しておりわんちゃん、ねこちゃんの負担を最小限に抑える低侵襲手術として用いています。
当院では、腹腔鏡機器を導入しており手術実績もありますので以下にご紹介させていただきます。
腹腔鏡の工程
人医療の分野においての腹腔鏡を用いた外科手術や検査は、通常のお腹を開けて実施する開腹手術に比べて体に対する負担が少ない低侵襲手術と定義されています。
動物医療の分野でも、腹腔鏡を用いた外科手術や検査は開腹手術より低侵襲であり動物に対して負担が少なくなります。
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Flow01
お腹の皮膚を小さく切り、切れ込みを入れる。
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Flow02
切れ込みに器具を挿入するアクセスポートを設置する。
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Flow03
お腹の中がよく見えるように空気を入れ(気腹)、腹腔鏡とその他鉗子などの器具を挿入する。
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Flow04
腹腔鏡から得られた映像を見て、手術など様々な手技を行う。
腹腔鏡のメリット
- 小さな傷で、回復が早い: 従来の開腹手術と比べて、傷口が小さく、術後の痛みも少なく、回復が早いです。
- 動物への負担軽減: 手術のリスクが高い動物でも、負担を軽減できます。
- 胃腸の早期回復: 胃腸の回復が早く、術後の食事制限も短期間で済みます。
- 呼吸器合併症の低減: 術後の呼吸器合併症のリスクが低くなります。
- 癒着の抑制: 手術後の癒着が起こりにくいことが期待できます。
- 短縮された入院期間: 入院期間が短くなるため、動物も飼い主さんも安心できます。
- リアルタイムな情報共有: 手術中の映像を共有することで、より適切な治療が行えます。
- 繊細な手術の精度向上: 細かい手術をより正確に行うことができます。
腹腔鏡のデメリット
- 高度な技術が必要: 鉗子の操作や遠近感の把握など、熟練した技術が必要です。
- 手術時間の増加: 手術時間が長くなる傾向があります。
- 視野の制限: 視野が制限されるため、細心の注意が必要です。
- 止血の難しさ: 従来の手術に比べて、止血が難しい場合があります。
- 技術不足によるリスク: 熟練していない医師が行うと、危険な場合もあります。
当院使用機材
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ビデオシステム OTV-SC2
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高速気腹装置 UHI-4
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光学視管ラインアップ
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ハンドル・シース
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把持鉗子
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剥離鉗子(メリーランド型)
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鋏鉗子(メッツエンバウム型)
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生検鉗子
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シーリングシステム
費用について
手術内容 | 費用 |
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腹腔鏡避妊手術 | ¥150,000~ |
腹腔鏡下組織生検 | ¥150,000~ |
症例紹介
避妊手術
アフガン・ハウンド(体重24kg)に腹腔鏡下で避妊手術を行った症例です。
ご家族が低侵襲の避妊手術を受けさせてあげたいといった思いで当院を受診されました。
開腹下の卵巣子宮摘出術と比べると気腹した腹腔内での手術になるため卵巣提索という靭帯を牽引することが少ないです。
靭帯を牽引しないことは組織に愛護的であり、手術後の疼痛管理がしやすいことが特徴です。
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写真では卵巣動静脈をシーリングシステムで止血切断しています。
腹腔鏡下では肉眼では観察しにくい細かな血管なども鮮明に確認することができます。これにより安全に手術が可能です。 -
術後の傷は写真のようになります。術後の合併症もなく元気に退院することができました。
肝臓生検
慢性的な肝機能障害に対して腹腔鏡下組織生検を行った症例です。
開腹下の組織生検に比べると明らかに術創が小さく低侵襲で行うことができます。
肝機能障害があるわんちゃん、ねこちゃんは麻酔リスクが高いため、低侵襲である腹腔鏡下肝臓生検は検査のリスクを下げることに役立ちます。
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写真のようにアクセスポートを設置して腹腔鏡下での肝臓組織生検を行います。
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画面に映し出された肝臓を確認し組織を採取しているところです。上の写真のように腹腔鏡で画像を映し出しているため肝臓の構造やその他の血管などがはっきりと見えています。
肝臓組織生検の結果この子は銅関連性慢性肝炎と診断することができました。その結果その後の治療指針の決定につながりました