腫瘍
胸腺腫
胸腺は、胸骨の裏側、心臓の頭側(前縦隔)にあり、Tリンパ球と呼ばれる白血球を作っている臓器です。幼少期においては体の免疫を担う重要な働きをしています。胸腺は、成長するに従って徐々に小さくなていき、成年期になると退化して脂肪組織となり、働きを終えます。
胸腺腫は高齢の犬、猫に起こる非常に稀な腫瘍です。心臓の頭側に腫瘤を形成し、通常増殖は緩徐であり、症状が出た時にはかなり大きくなっていることもあります。
犬猫いずれにおいても品種、性による好発性はしられていません。
主な症状
特徴的なものには、呼吸困難(咳、呼吸が荒いなど)、吐出(食べたものをそのまま吐く)などがあります。
こんな事はありませんか?
- 呼吸が苦しい。
- 食べたものが飲み込みにくい。
- 食べたものをすぐに吐く。
診断
身体検査(特に聴診)で呼吸の状態を確認します。
レントゲン検査では心臓の頭側に白い影となって描出されます。
その他、超音波検査、細胞診検査、CT検査などで病変内部の詳細や周囲血管の評価や転移の有無を確認します。
症例
全胸部に発生した非常に大きな胸腺腫の手術の写真です。
本症例は、腫瘍が非常に巨大で、周囲組織(肺、心臓、胸膜)に癒着し、一部、大静脈内にも浸潤していました。
周囲血管、神経などに注意しながら慎重に摘出しました。
前大静脈に浸潤した腫瘍も血管をクランプ(一時的に遮断)することで摘出しました。

この写真は血管内に浸潤した胸腺腫を摘出する前に前大静脈をクランプ(遮断)している様子です。
この後、血管を一時的に切開し血管内の腫瘍を摘出して閉鎖しました。
