肺高血圧症
肺高血圧症とは様々な要因によって心臓から肺に血液を送る血管(肺動脈)の圧力(血圧)が高くなる病気です。肺動脈の血圧が高くなると、血液の流れが悪くなり心不全をおこします。
健常動物の肺循環は低圧であり、血管抵抗が低くて血液収容能力がかなり高いです。正常な犬の肺動脈圧は、収縮期圧25mmHg、拡張期圧8mmHg、平均圧12〜15mmHgである。このように肺動脈圧が低いために右心室の仕事量は最小限に抑えられ、右心室の心筋血流は最適に維持されています。
肺血管症の60%以上が失われてはじめて肺高血圧症になります。一般的に平均肺動脈圧25mmHg以上もしくは収縮期肺動脈圧35mmHg以上で肺高血圧症と診断されます。
肺動脈の圧は超音波検査にて推定肺動脈圧を測定することで計測することが出来ます。
主な症状
軽度から中程度の場合はほとんど症状がありません。症状はかなり進行してから出ることが多く、咳、息切れ、浅くて速い呼吸、疲れやすいなどの症状がみられます。重度ではお腹が膨らんできた、失神するなどの症状がみられます。
肺高血圧症はどの年齢層の犬にも発生するが、特に中年齢から高年齢の犬に好発します。
ある研究によれば、来院時の主訴として多いのは運動不耐性(45%)、発咳(30%)、呼吸困難(28%)、失神(23%)であった。
こんな事はありませんか?
- 咳をする
- 呼吸が浅く早い
- 疲れやすい
- 運動を嫌がる
- お腹が膨らんできた
- 失神することがある
診断
診断プロセスとして、肺高血圧症の存在を確認するとともに、関連する病態を明確にする必要があります。
重度肺高血圧症を示唆するX線所見は、心拡大(特に右心拡大)と肺動脈の拡大です。進行例には右心系のうっ血性心不全徴候(胸水貯留、後大静脈の拡大、肝腫大、腹水など)を認めることもあります。
心電図検査では、右心拡大を疑う所見を認めます。併発疾患として心房細動、頻脈性不整脈、時に徐脈が観察される。
超音波検査は、肺高血圧症の確定診断には必要不可欠な検査です。肺動脈弁逆流症、もしくは三尖弁逆流症を認めた場合はその逆流血流を測定し、簡易ベルヌーイ式を用いると推定肺動脈圧を測定することが出来る。推定肺動脈圧が35〜50mmHgだと軽度、51〜75mmHgだと中等度、75mmHg以上だと重度と分類される。
肺高血圧症は、それを引き起こした基礎疾患によって内服の種類や量が変わる疾患であるため総合的な評価が重要になります。
症例
写真は肺高血圧症の診断に有用な超音波ドップラーの写真です。
肺高血圧症が無ければ起こりえない高速な逆流が起こっていることが分かります。
