腫瘍
肥満細胞腫(犬)
犬の皮膚腫瘍の中で7~21%を占め最も多い腫瘍です。「偉大なる詐欺師」とも呼ばれ、多種多様な形態をとる悪性腫瘍であり、警戒すべき皮膚の悪性腫瘍です。肥満細胞腫の多くは皮膚に孤立性の腫瘤を形成しますが、約10%の症例は多発するといわれています。肥満細胞腫はその細胞質にヒスタミンやヘパリンなどの顆粒を持っていて、これらの顆粒が放出(脱顆粒)することで、掻痒、腫瘍周囲の紅斑や腫脹、出血がとまりにくいなどといった臨床症状(ダリエ徴候)を引き起こします。肥満細胞腫はすべて悪性腫瘍ですが、高悪性度のものは、肝臓や脾臓などの全身に早期に広がり、命に関わるため早期の診断・治療が必要になります。
主な症状
典型的なものでは腫瘍の紅斑や腫脹、患部の掻痒などがみられます。
肥満細胞から出るヒスタミンによって消化管潰瘍が起こり、嘔吐や食欲不振、メレナ(黒色便)といった症状がみられることがあります。
また、重症の場合ショックを起こして亡くなってしまうこともあります。
こんな事はありませんか?
- 皮膚にしこりが出来ている
- 腫瘍が赤い、痒がる
- 腫瘍が大きくなったり、小さくなったりする
- 嘔吐、下痢をする
- 黒色便が出る
診断
様々な形態をとるため、外観や身体検査のみでは他疾患との鑑別は困難です。
病変部の針生検を行い、細胞診検査を行います。細胞診での診断率は90%以上といわれています。
組織学的評価を行うため、術前に組織生検を行うこともありますが、出血に注意する必要があり、必ずしも実施はしていません。
また、肥満細胞腫が疑われた場合は、リンパ節の細胞診、超音波検査、X線検査などを実施し、ステージングを行います。
c-KIT変異(遺伝子検査)が認められれば、分子標的薬が奏効することが分かっているため、必要に応じて遺伝子検査も実施します。
症例
皮膚に認めれらた肥満細胞腫の写真です。
黒い丸の所が、腫瘍が存在している部位(術前療法によって縮小)で、鉗子の部位が切除範囲になります。
