肝臓・胆道系腫瘍
肝臓腫瘍は、原発性肝臓腫瘍と転移性肝臓腫瘍の二つに大別されます。転移性肝臓腫瘍の方が発生が多いとされ、原発性肝臓腫瘍の発生はまれといわれています。転移性肝臓腫瘍は、悪性腫瘍であり、一般的に予後は不良です。
原発性の肝胆道系腫瘍は、肝細胞由来(肝細胞癌)、胆管由来(胆管癌)、神経内分泌由来(カルチノイド)、間葉系由来(血管肉腫など)に分類されます。発生は、肝細胞癌が最も多く、次いで胆管癌と言われています。
現在では、レントゲン・超音波検査などの他にCT検査に血管造影検査を組み合わせることで、術前に腫瘍の大きさや場所、血管走行などが確認できるようになり、診断精度が上がっています。さらにソノペットという超音波吸引装置を駆使し、以前は切除できなかったような難易度の高い肝臓腫瘍の切除も可能になりました。
主な症状
初期ではほとんど症状がありません。なんとなく元気がない、食欲がない、体重減少などの非特異的な症状が認められます。病気が進行すると吐いたり、下痢をしたり、黄疸がみられたりすることもあります。
また、腹水により腹囲膨満を示していることがあります。
転移性腫瘍の場合は、原発の腫瘍の症状が認められる事があります。(膵臓腫瘍の転移で低血糖など)
こんな事はありませんか?
- なんとなく元気、食欲がない
- 白目の部分や歯茎が黄色い
- お腹が張ってきた
- 吐いたり、下痢をする
診断
肝臓腫瘍は転移性であることが多いため、血液検査、レントゲン検査、超音波検査、CT検査などを総合して診断していきます。
特にCT検査は、発生部位、重要な血管との位置関係、転移の有無などを把握するために非常に重要となります。
肝臓の針生検を行い細胞診検査を行う場合もあります。
症例
症例は、犬(チワワ)、8歳10ヵ月齢(当院初診時)、避妊雌です。
外貌写真は、術後2年現在のものです。

CT検査で、外側左葉の基部に腫瘍が認められました。

腹部正中切開と傍肋骨切開により術野を確保しました。
腫瘍は外側左葉基部に存在しており、手術の難易度は高かった症例です。
血管を超音波手術器(CUSA)で露出させ、結紮やヘモクリップを用いて血管の処理を行いました。
画像は、超音波手術器で血管を露出しているところです。

血管の結紮を終え、腫瘍をメッツェンバウム剪刀にて離断しているところです。

別の症例の肝細胞癌の写真です。
腫瘍が大きくても、基部から十分に距離があれば手術の難易度は下がります。
